ミタブログ

鑑賞、読書、たまに観劇

0003 映画 #無垢の祈り を見た人と共有したい感想。人の痛覚を想像できると思うな!

映画が好きな作文です。

「無垢の祈り」を見てきました。

まずは予告編をどうぞ。

 ▼概要はこちら(公式サイトとYouTube予告動画の説明文より)。

introduction
作品解説

「みんな、殺されちゃえばいいのに」

原作 平山夢明 × 監督 亀井亨が創りだす最狂の自主製作映画がついに劇場公開!
映像化不可能と言われた平山作品の名作を映画化。

学校で陰湿ないじめを受ける10歳の少女フミ。
家に帰っても、日常化した義父の虐待が日を追うごとに酷くなり安息の時間もない。
母親は、夫の暴力から精神の逃げ場をつくるべく、新興宗教にいっそうのめり込んでいく。誰も助けてくれない

――フミは永遠に続く絶望の中で生きている。

そんなある日、自分の住む町の界隈で起こる連続殺人事件を知ったフミは、殺害現場を巡る
小さな旅を始める。そしてフミは「ある人」に向けて、メッセージを残した――。

『独白するユニバーサル横メルカトル』(光文社文庫)収録の短編集の一編
「無垢の祈り」を完全映像化。八つの短編から成り立つこの小説集は、
グロテスクな描写や不意を突かれる感動などが読者間で話題となり、
宝島社が毎年発行するミステリー小説のブックランキング
このミステリーがすごい!」で2007年度版第1位に輝いている。

平山作品の中でも絶大な人気を誇る「無垢の祈り」だが、
虐待・宗教・連続殺人などを盛り込んだ小説ゆえに、映画化が難しいとされていた。
それを自主製作に踏み切って映像化したのが監督の亀井亨だ。

原作者・平山夢明と監督・亀井亨は10年前、独立UHF局によって
深夜ドラマとして放送された『「超」怖い話』(TV版)で初タッグを組んだ。
平山が織りなす「恐怖」を亀井が地上波で限界突破して映像化したこの作品は、
その振り切った持ち味から深夜帯にも関わらず人気を博したが、「エグすぎる」との苦情が多かったことも話題になった。

それから10年。監督・亀井は平山の原作を幾度となく企画したが、
平山作品が持つ独自の「反道徳的」で「一般論」から遠くはなれるソリッドな作品は映像化がとても難しく、なかなか形にならなかった。

そこで亀井は、完全自主製作体制で「無垢の祈り」の映画化を試みたのだ。
企画立ち上げから3年。ようやく一般公開となった『無垢の祈り』。

主演は撮影当時9歳だった福田美姫。
虐待を繰り返す狂気の男に、芸人のBBゴロー。
亀井作品の出演は4作目となり、穂花から本名に改名した下村愛が新興宗教に狂う母を演じる。

原作者・平山夢明は、本作初号試写を観た後に「もう少し手加減しないと、観て死ぬ人が出るなと思った」と語る。
監督・亀井亨は「平山作品を映画化する際には、心が壊れてしまいそうな苦しい描写をそのまま映像化したいと考えていた」と語る。

現実社会に子供に対する虐待など、主人公フミが抱えているような問題は無数に転がり綺麗事では済まされなくなっている。
その問題をダイレクトに映像表現し、形になったものが「無垢の祈り」。

ふたりの創造者の限界突破した覚悟がスクリーンに映し出される。
観客は『無垢の祈り』を観た後、暫し席を立つことができないはずだ。

 

映画「無垢の祈り」 [Innocent Prayer]  

9月18日カナザワ映画祭2016プレミア上映。
10月8日より渋谷アップリンクにて公開。
他にて全国順次

 
キャスト・スタッフ 
福田 美姫   Miki Fukuda
BBゴロー   BB-Goro
下村 愛   Ai Shimomura
サコイ    Sakoi
綾乃テン   Ayanoten
奈良 聡美   Satomi Nara
YOSHIHIRO 
幸 将司    Shoji Yuki
高井 理江   Rie Takai
シゲル     Shigeru
三木 くるみ  Kurumi Miki
河嶋 遥伽   Haruka Kawashima

原作 平山 夢明  
「独白するユニバーサル横メルカトル 」より
「無垢の祈り」(光文社文庫)

Based on [Innocent Prayer] (Kobunsha library)     by Yumeaki Hirayama

監督 亀井 亨 Directed by Toru Kamei
脚本 亀井 亨  Screenplay by  Toru Kamei
撮影 中尾 正人 Cinematography Masato Nakao
音楽 野中“まさ”雄一(HEAD OFF.INC)  Music by Nonaka”Masa”Yuichi
美術 松塚 隆史 Director of Arts Takashi Matsuzuka
録音 甲斐田 哲也 Sound Recording Engineer  Tetsuya Kaida
音響効果 丹 愛 Sound Designer Ai Tan
撮影助手 坂元 啓二 Assistant for photography Keiji Sakamoto
DIT 石川真吾 (Bashauma Planning) DIT Shingo Ishikawa
助監督 芦塚 慎太郎 1st Assistant Director Shintaro Ashizuka
制作担当 内田 亮一 Production Manager Ryoichi Uchida
バイオリン演奏 石井夕紀 Violin Yuuki Ishii
字幕翻訳 ペコイチ  Subtitles translation undefined Pekoichi
映画配給協力 株式会社 DEEP END PICTURES film distribution cooperation DEEP END PICTURES
ポストプロダクション  Post Production 
東映ラボ・テック    Toei Labo Tech Co.,Ltd.
MAスタジオ
株式会社 キュー・テック  Multi Audio studio Q-TEC,INC 
アシスタントミキサー 江口奈美 Assistant Mixer Nami Eguchi

協力
スタジオ ダラ 中西 如 Studio DARA Nao Nakanishi
ヘッドオフ HEAD OFF.INC
株式会社グランドスラム GRANDSLAM.CO,LTD
馬車馬企画 Bashauma Planning
港 岳彦 Takehiko Minato
尾崎 未央 Mio Ozaki
多田遠志  TOHSHI TADA
小宮一葉 Kazuha Komiya

ロケーション協力
株式会社 アートワークスラパン

ロケーション協力
株式会社 アートワークスラパン ART WORKS LAPIN

©[Innocent Prayer]Yumeaki Hirayama/Toru Kamei

 本作は平山夢明さんの同名小説を映画化した作品。ネタバレ含め詳しくはこちらをどうぞ。

cakes.mu

 アップリンク21時の上映回で見てきました。

アップリンクはウェブ予約できるので、昼間から席の埋まり具合を逐一チェック。予約して買わなくても大丈夫そうだと踏んで、19時半ぐらいに劇場でチケットを購入しました。いざ上映時間になると、一列目以外はほぼ満席。早めに足を運んでチケットを買っておいてよかったと安心しました。

f:id:sakubun10:20161105124602j:plain

座席はD-1。仮設の座席1列を含めて、後ろから三列目の一番左に座りました。アップリンクは小さな映画館。インディー系映画を上映するような劇場で、スクリーンも狭く、このスクリーンの部屋も5m四方もないくらいのミニマムな上映室でした。

でも大型館に比べて各座席は背もたれが広く、足場もゆったりしていて、リラックスできます。1列ごとに階段状になっているため、前列の人の頭が邪魔で細部が見えないということも全くありません。映画館の雰囲気は、ある程度、上映室の広さに担保されている部分がありそうですが、アップリンクの上映室を体験すると広さじゃないんだということがよくわかります。

最近は映画上映会を個人が主催できるような時代になってきましたが、アップリンクのような上映環境は、広い施設を利用できない個人主催のイベントにとって、とっても参考になるのではないでしょうか。


 さて、映画「無垢の祈り」ですが、アトラクション的スリリングを一切排除しつつ、痛覚を刺激される映画でした。本作では、福田美姫さん演じる主人公・フミが、感情を隠さなければ生きていけない現実から逃れるために感情を発奮する瞬間にたどり着くまでが描かれています。

序盤から工場地帯という閉じた空間の内部で、さらに閉じた空間としてのフミ一家の家が映し出されていて、中盤でフミは救いを求めて工場地帯を詮索し、終盤の本当にラストでやっと救世主が迎えにきてくれる。エンドロールを含め、ずっと閉じられた狭い空間を脱することがないため、息苦しい気持ちを抱いたまま見続けた人も多いのではないでしょうか。

かくいうわたしも息苦しさは拭えず、この作品が描いたことを細部にわたって鑑賞できたのか本当に怪しいです。それぐらい見ていて耐え切れない要素が、幾重にも映像を列ねることで濃度を増していき、ラストシーンまで見るものを逃がさない作りになっていました。

そんな要素に濃度を蓄積していくための時間を作れたのは"間"を上手に使っていたからなのだろうと思います。鑑賞中は自主制作作品の都合で予算を削るために取られた手法だと思っていて、工場地帯を彷徨うフミを長回しで追うシーンがとっても多く、話が進まないことに焦ったさを感じました。実はこの間延びが効果的だったのかということには、鑑賞後まで気づくことはありませんでした。

映画「無垢の祈り」はR18+だけあり、酷いシーンのオンパレード。惨さと向き合う時、鑑賞者は様々な感覚を抱く可能性があるわけですが、その可能性をコントロールするために"間"が活用されていたように思います。そのため、鑑賞後に恐怖の余韻が残ることはなく、夢でこの映画にうなされたりもしませんでした。でも1日経った今日も、いつも見ていた景色(特に通り過ぎる人々)を見る目が変わったような気がしています。どこか静けさを見ることができるようになったというか、不思議な感覚です。

フミは痛みを持ってしか生きる発露をあらわにすることができないぐらいにまで追い込まれていたのでしょう。そんなフミのことをきっと連続殺人犯の骨無しチキン(サコイさん)は殺さなかったと思います。それはオープニングで眼帯をつけていたフミにつながっていきます。つまり、本作は延々とループする。映画「無垢の祈り」に終わりがないように、客観的に見てこの悲痛しか感じられない状況にも終わりはない。しかも超局所的世界。こんな狭小空間で悲痛な生を一人で全うできる人間など存在しません。だから誰かとつながるためのジャックを欲する。唯一、性だけが人と繋がるための手段として提示される。しかも、これはフィクションではないのだろうと、感じずにはいられなくなる。

本当に逃げ場のない世界観が描かれていました。だからこそ、フミの叫びが「無垢の祈り」だと真っ直ぐに受け止められた。こんな世界ぶっ壊れてほしい……。ただ、フミには死んでほしくないとわたしは思ってしまいました。殺してあげたいと、思えませんでした。特にラストシーンでは、本当にフミを襲った痛覚と繋がったような気がしていたのにもかかわらず……。やっぱり、苦痛にだけは想像で補うことが不可能な固有の真実が隠されているのだと思います。どんなに頑張っても、理解した(共感した)フリにしかならない。だからこそ、そこに救いが必要。じゃあ、どうすれば救いをもたらすことができるのか。それは個人が助けることなのか、社会が整えるものなのか。

映画「無垢の祈り」をもう一度見たくなってしまう要因は、細部を把握仕切れなかったことよりも、この読後感から生まれているように感じています。

追伸

それにしても、福田美姫さんの演技が凄まじかった。他の役者さんの演技も良かったけれど、福田さんの演技にだけは既視感がありませんでした。どんな精神状態だったんだろう。(完)


UPLINK

innocentprayer.s2.weblife.me


映画関連インタビュー、コラム、エッセイのご依頼歓迎。お問い合わせ先は、準備中です。
Respect for CINEMA HUSTLER